超★税率差異分析

税率差異分析

先日、税率差異分析っていうちょっと変わった仕事をしました。

金融商品取引法に基づく財務諸表を作成する場合において、法定実効税率と実際の実行税率とに差異があるときは注記が必要になるんだそうです。
(モン太もぜんぜん知りませんでした・・・タックスプルーフって言うらしいです)

税率の差異を細かく分析して財務諸表に注記するんですね。

金融商品取引法に基づく・・・とありますから一般の中小企業ではこんなもん求められることはないんで税理士が税率差異分析することは滅多にないと思います。

モン太も顧問先の経理の方から依頼を受けてやってみたんですが、
結構面白かったんでここにまとめてみました。

実務家のみならずの税効果会計を勉強中の方も理解が深まるかもしれませんよ。

 

税率差異の原因

そもそもなんで税率差異が発生するのか?

それはP/L上の法人税等負担額が必ずしも次の算式を満たすものでないからです。

(税引前当期純利益±一時差異)×法定実効税率=法人税等負担額

要は別表四の当期純利益以下、加算減算する項目の中で税効果会計の適用を受けないもの。
所謂流出項目、それが税率差異の発生する原因なのです。

その差異の原因となる代表的なものを挙げてみました。

  1. 受取配当等の益金不算入額、交際費の損金不算入額などの永久差異
  2. 試験研究費などの特別控除
  3. 軽減税率の適用
  4. 住民税の均等割
  5. 税効果会計の適用税率差異
  6. その他

ひとつひとつ見ていきましょう。

 

1.受取配当等の益金不算入額、交際費の損金不算入額などの永久差異(+-)

これらふたつは永久差異の代表ですね。
これらの項目は課税所得計算上加算・減算され法人税等の負担を増減させますが、留保項目と違って将来の課税所得を減算・加算させる効果はありません。

そのため税効果会計が適用されず、税率差異が発生するわけです。

ちょっと実際の数字で見ていきましょう。

例えば、税引前利益が1,000、法定実効税率が30%、交際費の損金不算入額が200と仮定すると、

①交際費の損金不算入額ががない場合

税引前利益 1,000
法人税等   300
当期純利益  700

となります。
当たり前です。

②交際費の損金不算入額がある場合

一方、交際費の損金不算入額がある場合加算流出が200あるため、法人税等は1,200×30%=360となり、

税引前利益 1,000
法人税等   360
当期純利益  640

となります。

実際に差異分析する際には他の項目もあるのでこんな別表シミュレーションすることはありません。

分析方法は以下の通り

損金不算入額200×法定実効税率30%=60

って計算します。

 

この差額60が税引前利益1,000を占める割合6%を差異原因として財務諸表に注記することになるんですね。

税引前利益に対して6%法人税等が増えているよってことで、

交際費の損金不算入による影響 +6%

いう具合に注記します。

もちろん減算・社外流出項目も同じように計算します。

税額控除以降の項目も同じように分析して限りなく差異と分析結果との差を0%に近づけていくわけです。

 

税額控除(-)

試験研究費などの税額控除も税率差異の原因となります。
別表四で課税所得を調整するわけではないので永久差異といわれるとピンと来ないかもしれませんが、将来の課税所得を加算・減算させる効果がないという意味では立派な永久差異です。

ここで注意したいのは住民税です。
税額控除はその名のとおり課税所得ではなく法人税額をダイレクトに控除するので課税所得を課税標準とする事業税には影響しません。

影響するのは地方法人税、都道府県民税・市町村民税の法人税割だけです。

実際の分析方法は以下の通り
便宜的にモン太の住んでいる大阪府大阪市と仮定しますね。

税額控除実額×(1+地方法人税率(A)+府民税法人税割税率(B)+市民税法人税割税率(C))

と計算します。

 

軽減税率(-)

法人税、事業税の軽減税率を適用することによっても税率差異が発生します。

法人税の軽減税率は中小法人の年800万円以下の所得に対する税額が軽減されるというもの。

もちろん地方法人税、各住民税法人税割にも影響します。

現行の法人税率23.4%、軽減税率15%と仮定した場合の分析方法は、

8,000,000×(23.4%-15%)×(1+(A)+(B)+(C))

となります。

事業税の軽減税率の計算は割愛しますが、考え方は法人税の軽減税率と同じです。
事業税の軽減税率は2段階となっていること、地方法人特別税にも影響することにご注意ください。

 

均等割(+)

住民税の均等割は法人の課税所得の増減に関係なく課されます。

法定実効税率にはこの住民税均等割は考慮されていませんので差異分析上加算する必要があります。

金額は都道府県、市町村の均等割の金額そそままです。

 

ここまではいいんですよ、ここまでは

 

ここまではP/Lと別表が読めれば割と簡単に分析できます。
この先が厄介なんです・・・

 

税効果会計の適用税率差異(+-)

モン太がなかなか理解できなかったのがこの税効果会計の適用税率との違い。

理解できればたいした問題ではないんですけどね。
税効果会計が理解できてないとこんがらがっちゃうんですね。

 

この税効果会計、適用されている税率が必ずしも法定実効税率と同じとは限らないんです。
というのも、
a,期首の一時差異に適用されているのは前期末時点の将来の法定実効税率、
b,期末の一時差異に適用されているのは今期末時点の将来の法定実効税率。
c,税額計算での法定実効税率は今期末時点の今期の法定実効税率。
みんな微妙に違うんですね。
特に近年はb,の法定実行税率が大きく変わっている傾向にあると思います。

 

ここでは別表四の租税公課関係以外の留保項目にはもれなく税効果会計が適用されていると仮定します。
加えて将来減算一時差異・将来加算一時差異ともに同じ税率が適用されていると仮定しますね。

ちなみに純資産直入の評価差額金等に関しては税効果会計の適用はあるものの、別表加算・減算は行わない項目なんで一時差異からは除かなくてはなりません。
ご注意ください。

基本的な考え方としては、
一時差異に対して上記c,の法定実効税率が適用されていればそもそも差異が発生することはないんだよってこと。
その上で違う税率が適用されていることがどう影響しているのかって話です。

実際の分析方法ですが

ⅰ,まず、c,の法定実効税率を適用して(そもそもあるべき)法人税等調整額を計算します。

(期首一時差異純額 ー 期末一時差異純額)× c,の法定実効税率

ⅱ,そして、実際に適用されている法人税等調整額を計算。

期首一時差異純額 × a,の税率 - 期末一時差異 × b,の税率
注)P/L上の法人税等調整額と同じになる(はず)ので特に計算はいりません。

ⅰとⅱの差が税率差異の原因となります。

・・・が!
これが加算すりゃいいのか減算すりゃいいのかわかんなくなっちゃうんですね。
法人税負担が増えているものを減らす効果のあるものを増やしているから減らすのか?とかなっちゃうわけです。

ここはⅰ,の(そもそもあるべき)法人税等調整額に対してⅱ,の実際の法人税等調整額が増えていれば法人税等の負担額があるべき姿より増えているってことなんで加算(+)します、多分・・・。
法人税等調整額を含めての法人税負担と考えればやっぱりプラスするんでしょう、いやぁほんとわからん。

まぁ、増えてりゃプラス、減ってりゃマイナスでええんとちゃいますか?
なんか文句あります?

他にも差異原因あるよ

今回は税率差異の代表的なものを紹介しましたが、他にもいっぱいワルさしよる奴がいっぱいいます。

  • 外形標準課税
  • 控除対象外法人税額
  • 期限切れ欠損金
  • 留保金課税
  • 一時差異で回収可能性のないもの
  • 外国税額関係

挙げればキリがないんでこのへんにしときます。
でも基本的な考え方は同じですよ。

モン太の場合、外形標準課税の税額が租税公課勘定に計上されているのに未払事業税として税効果会計が適用されているとかいうのもありました。
細かい差異なんで「その他の差異」で逃げましたが・・・

 

オマケ:検算方法

理屈ではこうやって漏れなく分析していけば解明するはずなんですけどね。
どう計算しても0%になってくれないもんです。

0.数%までいけばあとは「その他」で逃げれますが、5%とか残ってるとそうもいかない。
でもどうやっても埋まらん、どこに原因があるんかもわからん、アイヤーーーーッ!!!!ってなるんです。

そこでね、一旦角度を変えて考えてみると原因がどこにあるのか見つかるかもしれません。
そこでモン太なりの検算方法をひとつ。

  1. 別表1の所得金額に対して税額控除と軽減税率を適用しないで法人税等(事業税・住民税も含めて)を計算します。
  2. その金額とP/L上の法人税額との差額が大きければ原因はそのどこかにあるわけですね。
  3. 逆に差額があまりなければ別表四以前に原因があるんです。
  4. 今度は別表四の流出項目で同じ検算をする

そこで差額が出なければもう税効果会計しか原因はないやん、ってな具合に特定していくことができます。
時間めっちゃかかるんで最後の手段ですがね。

 

まとめ

ってな具合にあの手この手で原因を分析するんですね。
パズルみたいで面白かったですよ。

しかし、長かった~。

超☆実務、記念すべき第1回目なんで気合を入れて書きました。
自分の中ではもっと基本的なことをまとめるカテゴリのはずだったんですが・・・

税率差異分析って色々調べてもなかなか理解が進まなくって。
理解できた今考えればあのサイトはこういうこと書いてたのかぁ、とか思えるんですけどね。

もしかすると誰かの役に立つかもと思いましてここにまとめてみたまでです。

そもそも検索されんのかいな・・・

モン太の税率差異分析講談でした。

 

 

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